人工股関節再置換

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人工関節は20年で駄目になってしまうと考えている方は多いのではないでしょうか。20年前にいれた人工股関節も90%以上の割合で問題ないです。しかも、この確率は20年前に使われていたタイプのもので、現在はより改良された人工関節を入れています。そのため、今後はさらに成績が期待されています。それでも、再置換が全くないわけではありません。患者さんから「再置換術をしたら歩けなくなるのでは?」、「手術は大変で痛みがつよいのでは」とか「何ヶ月も入院しないといけないの?」といった不安をよく聞きます。実は、全ての人工関節の中で、人工股関節の再置換は、最も進歩しているのです。これは大腿骨頭壊死のように若年で人工股関節を行う方が多かったことと、昔の人工股関節が再置換になることが多かったためです。そのため、再置換のインプラントも、再置換の手術手技も非常に工夫され洗練されてきています。人工股関節再置換は決してあきらめるための手術ではなく、今後さらに活動的な生活をするための第一歩です。再置換に対して正しい知識を持って不安のない生活を送りましょう。

再置換の原因

手術して何年もたった後に人工股関節が再置換となる理由にはいくつかあります。

  1. 摩耗、骨溶解

  2. 人工関節の破損

  3. 感染

  4. 脱臼

  5. 骨折

 

細菌感染

肺炎や腎炎などからだの他の部分の感染症から血液中に細菌が入り関節に回って人工関節の周囲についてしまことがあります。感染の治療を行っても治らず、人工関節が緩んでしまったりすることがあります。そのようなときには再置換が必要になります。

人工股関節のゆるみ

再置換が必要になる最大の理由は、人工関節の摩耗などにより、人工股関節がゆるむケースです。人工関節はポリエチレンや金属のこすれる部分や金属同士がはまり込んでいる部位があります。このような場所では徐々にすり減り、削りカス(摩耗粉)が発生します。その摩耗粉に免疫系が反応し、周りの骨を溶かしてしまうことがあります(骨溶解)。そうすると、しっかり固定していたはずの人工股関節周辺に隙間ができてしまいます。これが、ゆるみの原因です。早い段階でゆるみなどの変化に気づいてすぐに対応できれば、ライナーの交換だけで済んだり、骨があまりなくならないうちに手術を再度行ったりすることができます。複雑な手術になる前に、一部の部品交換で済むのであればそれに越したことはないと思います

人工股関節再置換術の方法

再置換術には人工股関節のライナーやボールといった骨とついていない部品交換のみを行う方法と、カップやステムなどの骨とつながっている部品を入れ換える手術です。骨とついていない部品交換だけで済むため手術時間は短く(初回手術よりも短いことも多いです)、出血も少ないです。

  • 臼蓋側(カップ)だけ

  • 大腿骨側(ステム)だけ

  • 臼蓋側(カップ)と大腿骨(ステム)の両方

これらは、骨に挿入・設置してあるインプラントを取り除いて改めて設置します。

骨の欠損が大きい、または骨が薄くなってしまっている場合は、交換だけでなく骨の移植・補強も必要です。その際には以前は自分の骨を取ってきて補充する場合や人工骨(カルシウムでできています)、最近は金属製の補強材料なども豊富になってきています。大腿骨側では、長いステムに入れ替えるなどを行うようになっています。骨を移植するなど複雑な手術の場合は、手術した足に体重かけることできるようになるまで数週間かかり、入院期間も8~10週間くらいかかることがあります。手術の方法もかなり研究されてきているので、再置換を行っても後遺症が残ることは非常に少なくなってきています。

 

 

再置換の合併症

再置換では、初回の人工股関節よりも合併症が多いことが知られています。

例えば人工股関節術後の脱臼は、平均では初回 では1~5%、再置換では5~15%と言われており、再置換の方が脱臼率は高いです。術後感染の発生率も初回では0.2~2.9%で、再置換術になると0.5~17.3%に増加すると言われています。これらの発生率は一部だけ交換したような小さな手術から、全体をすべて取り換えて骨移植までしたような大きな手術を含めてです。なるべく安全に手術を行うためにも、再置換を後回しにしすぎないことも大切です。

 

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人工股関節の再置換と言われると、もう一度手術しないといけないことへの恐怖心や不安な気持ちが募るかと思います。現在では、再置換するための機械や、技術も進歩しています。骨の欠損が非常に大きいような特殊な場合を除いては、筋力があって骨がしっかりしていれば再置換も初回の手術とさほど変わらなくなってきています。必要以上に再置換術を恐れることはありません。重要なのは、定期的外来を受診して、骨の状態が非常に悪くなる前に、より負担の少ない手術で再置換を行うことです。