人工股関節がもし脱臼を繰り返したらどうするの??

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人工股関節(THA)はインプラントの進歩や、MISの手術手技でほとんど心配なくなってきています。ただ、それでも再手術であったり、元々の変形が非常に強かったり、MISではない手術方法で手術が行われてしまったりすることで脱臼しやすくなってしまうことがあります。

 

 

私のところにも、『他の病院で人工股関節の手術を行ったけれども、そのあと何度も脱臼して困っている』と相談に来る方が多くいます。ほとんどの場合は、手術した病院では『股関節を深く曲げないように』とか、『筋肉をつけましょう』とか言われるだけのようです。脱臼を気にせずに生活できるように、一人一人の原因にあった治療法を提案しています。

脱臼の原因

設置不良

人工股関節は脱臼しにくく、長持ちさせるために、設置する最適な角度が決まっています。アプローチによって、少しずつ角度を調整する必要はありますが、最適な角度で設置すると脱臼しにくくなります。逆に、設置の角度が大きく狂うと脱臼しやすくなってきます。ナビゲーションシステムなどは、この設置角度を厳密に行うために有効です。

カップの設置角.jpg

脚長とオフセット

人工股関節を安定させるためには、関節包や靭帯、筋肉などが適度に突っ張ている方が良いのです。そのために、足の長さを延ばしたり、臼蓋や骨盤中心から大腿骨を外側に距離を置く(オフセットを延ばす)ことで、突っ張るようにします。

足を延ばしすぎたり、オフセットをつけ過ぎると、痛みや歩きづらさがでます。逆に脚長やオフセットが不十分だと脱臼しやすくなります。

脚長.jpg
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軟部組織が緩い

人工関節で脚長をどれだけ伸ばしても、オフセットをどれだけ大きくしても、軟部組織突っ張ってくれない方がいます。これは、その方がもともと関節包や靭帯が柔らかく伸びやすい体質のことがあります。非常に脱臼しやすいです。

 

 

 

元の変形・前の手術

元々の変形が強いと、人工股関節が理想の角度で入らないことが少なくありません。また骨盤回転骨切り(RAO)などの手術をしていると、骨が変形していて、いい位置に人工関節が設置できないだけでなく、周囲の筋肉や関節包も一度切っているので十分に突っ張ってくれないのです。そのため脱臼が非常にしやすくなります。

 

 

骨盤の傾きの変化

年齢を重ねるとともに、背中が丸くなってくる方は少なくありません。これは背骨がつぶれてくるためです。背中が丸くなると骨盤は後ろに傾きます。その結果人工股関節のカップの傾きが変わり脱臼しやすくなります。

装具

手術した直後であれば、装具をつけて股関節が内側に入らないようにしたり、曲がりすぎたりしないようにすることが有効です。装具をつけることでしばらくすると周囲の軟部組織が硬くなり脱臼しにくくなりますので、3~6か月たった時点で装具を外します。ただし残念ながら、すでに手術してから時間が経って脱臼も複数回起こしている場合には、軟部組織が硬くならないので、装具をつけている間だけしか効果がありません。

脱臼用装具.jpg

治療法

手術

再度手術をすることで脱臼をしにくくする方法があります。カップやステムの設置角が適切でない場合には、入れなおしてくることがあります。他にも、脚長やオフセットを増やすために、ヘッド(ボール)やライナーを交換するなどの方法があります。

まだ、ライナー自体も動くことで脱臼しにくくするデュアルモビリティーカップや、ライナーの上からリング状の蓋を被せることで脱臼させないようにするコンストレインライナーなどの特殊なインプラントもあります。

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