
人工股関節・人工膝関節の最新知識
浅草病院人工関節センター長
東北海道病院非常勤医(2024年4月から)
望月 義人



膝関節と股関節の痛みに対する手術

『歩き出す』ときや『階段の昇り降り』などの動作のとき、突然膝や股関節に痛みが走ったことはありませんか?これらの動作は、わたしたちが日常生活を送るうえで避けては通れません。しかし、年齢を重ねるにつれて大きくなる膝や股関節の痛み・・・その原因のひとつが「変形性関節症」といわれています。整形外科では、骨や筋肉、関節といった運動器の治療を行っています。ここでは膝や股関節の痛みの治療に有効な人工関節置換術についてご紹介します。
ひざ関節のしくみ
膝関節は大腿骨(腿の骨)、脛骨(すねの骨)、そして膝蓋骨(膝の皿)から構成されており、関節の回りにある靱帯や筋肉で安定性を保つことにより、自由に曲げ伸ばし運動ができるようになっています。また、それらの骨の表面は弾力性があって、滑らかな軟骨で覆われています。軟骨は関節を動かしたり、体重が掛かった時の衝撃を吸収するクッションの役目をもっていますが、年齢を重ねるにつれてクッションの役割を果たす軟骨がすり減り、体重がかかるたびに軟骨の下の骨同士がこすれ合って痛みを生じたり、こわばったりするようになります。
変形性膝関節症
膝関節に発症する慢性の関節炎です。多くが外傷などの明確な原因がなく、自然に発症してくるもの(一次性)で、レントゲンで関節のすき間(関節裂隙)が狭くなったり、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげのようなものが認められれば変形性膝関節症と診断されます。比較的女性に多く、年齢と肥満が関連するといわれています。

人工膝関節置換術について
現在、変形性膝関節症の手術で最も多く行われているのが、人工膝関節置換術です。関節全体を入れ換える手術ではなく、痛みの原因であるすり減った軟骨と傷んだ骨の表面部分を切除して、金属やプラスチックでできた人工の関節に置き換える手術です。痛みの大きな改善と、早期の回復が期待できる治療法です。
膝関節の損傷が比較的軽度の患者さんの場合、膝の片側だけを置き換える人工膝関節部分置換術が適用できる場合があります。膝全体を置換する全置換術と比べて小さな人工関節のため、骨を削る量や手術の傷も小さく、より早期の回復が望めます。